「私は精神障害で2級の年金をもらえますか?」

『私は精神障害で2級をもらえますか』

筆者の事務所が行っている、障害年金の無料相談にて、そのような質問を受けることが多いです。精神の障害で障害年金2級の支給が認定される状態とはそのようなものなのでしょうか。今回みんなで考えていきたいと思います。

精神障害「2級の年金貰える?」

筆者の事務所で障害年金の無料相談を行っておりますが、長年、うつ病や統合失調症を患っていて、障害年金の請求を検討している方やその家族から、『私は、長年精神障害を患っていますが、障害年金2級を受給できるでしょうか?』という質問を受けることがあります。これは、はっきりいって非常に難しい質問です。相談者やそのご家族のお話から、筆者の数年における経験により、「2級はいけるかな」とか「3級はいけるかな」などと、なんとなくですか判断することはできます。しかし、自覚症状と医師が判断する症状に、相当な解離が生じることもありうるからです。実際今年の夏に精神の障害で年金を請求をした方がいました。10年近く、日常生活が、ご家族の介助なしでは成り立たない状態でありながら、障害年金は3級しかもらえませんでした。診断書の内容、特に「日常生活の能力の判定」や「日常生活の程度」が、実際の症状(ご家族の話を聞いた限りですが)よりも軽く書かれていたような気がして、主治医に相談に行きました。その医師は『この方は障害年金2級をもらうほど、重たい症状ではないです。』と言われました。いっけん、家族の介助が必要で10年近く社会復帰できないような方でも障害年金2級を受給できないこともあるのです。これが、精神障害で2級をもらうということの現実なのかもしれません。かなりハードルが高いのでしょう。

認定基準「精神障害で2級とは?」

精神障害で2級の年金がもらえる状態とは、国年令別表に「精神の障害であって、前各号と同程度(日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度)以上と認められる程度のもの」(16号)が揚げられています。

障害認定基準の第1章第8節/「精神の障害」の認定要領においては、精神障害(統合失調症・統合失調症型障害及び妄想性障害・気分(感情)障害など)で障害等級2級に該当するものの例示として、「1 統合失調症によるものにあたっては、残遺状態又は病状があるため人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があるため、日常生活が著しい制限を受けるもの」「2 気分(感情)障害によるものにあたっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その状態は著しくはないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限をうけるもの」などが揚げられています。しかし、これを見て、何が障害年金の2級で、何が2級じゃないのかは、さっぱりわかりません。そもそも精神障害の症状は検査で数値化できるものではないですよね。いったい、上記の状態にあるというのは、何を根拠にそう判断しているのでしょうか。

精神障害「診断書の重要項目」

では、精神障害での等級はどうやって判定しているのでしょうか。それは精神障害の診断書の裏側「日常生活能力の判定」という箇所が大きくものをいいます。日常生活能力がどれだけあるのか、ということを医師が判断し、7項目についてそれを4段階に分けて、診断書に記入していくのです。実はここが、精神障害の障害年金支給において肝となるのです。ちなみにその7項目とは、1適切な食事摂取、2身辺の清潔保持、3金銭管理と買い物、4、通院と服薬、5、他人との意思伝達及び対人関係、6、身辺の安全保持及び危機対応、7社会性、です。これらの7項目を医師が4段階に分けて評価します。その4段階とは、軽い順に、1できる、2、自発的にできるが時には助言や指導を必要とする、3自発的かつ適正に行うことは出来ないが助言や指導があればできる、4助言や指導をしてもできない若しくは行わない、というものです。この7項目がそれぞれ、4段階の重いほうにどれだけ評価されるかどうかが、障害年金支給の当否の分かれ目となるのです。

精神障害「ガイドラインで2級とは」

ところで、平成28年の9月より、「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が適用されることになりました。以下が年金機構のホームページより、そのガイドライン運用開始について記載した箇所の抜粋です。

障害基礎年金や障害厚生年金等の障害等級は、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に基づいて認定されていますが、精神障害及び知的障害の認定において、地域によりその傾向に違いが生じていることが確認されました。

こうしたことを踏まえ、精神障害及び知的障害の認定が当該障害認定基準に基づいて適正に行われ、地域差による不公平が生じないようにするため、厚生労働省に設置した「精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会」において、等級判定の標準的な考え方を示したガイドラインや適切な等級判定に必要な情報の充実を図るための方策について、議論がなされました。

今般、当該専門家検討会の議論を踏まえて、精神障害及び知的障害の認定の地域差の改善に向けて対応するため、厚生労働省において、ダウンロードのリンク 新規ウインドウで開きます。『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』(PDF 6,597KB)を策定し、本年9月1日から実施することとされました。

このガイドラインが運用されるまでの経緯については、ここでは詳しく触れませんし、またその是非についても今さら議論するつもりもありません。ガイドラインの運用の仕方としては、精神の診断書の「日常生活能力の判定」と「日常生活の程度」を点数化して、等級を客観的に判定するというものです。このガイドラインである程度振り分けて、あとは総合的(療養状況・生活環境・就労状況などを勘案する)に評価し、正式に等級を決定するというものです。このガイドラインによれば、「日常生活の程度」が(3)の場合、「日常生活能力の判定」が3・0以上3・5未満の場合は2級。2・5以上3・0未満の場合は2級から3級。2・0以上2・5未満の場合は2級から3級となるといいます。このガイドラインによれば「日常生活の程度」が(3)の場合、「日常生活能力の判定」が3・0以上でなければ障害年金2級支給は「微妙」となるのでしょうか。ガイドラインが運用になってから、この記事を書いている現在までにおいて、筆者の請求した精神の障害年金の方は数件あるのですが、いまのところ結果はでていません。しかし、精神の障害年金のハードルはさらに上がっていくような気がします。

精神障害「医師に伝えること」

日常生活は日常でおきている

精神障害で2級の年金を受給できるかどうかは、上記のとおり、診断書の「日常生活能力の判定」の評価をどう受けるかが肝心であるということがよくわかっていただけたかと思います。「ガイドライン」の適用により、その傾向はさらに高まるでしょう。精神障害の年金は、他の傷病と違い数値で判断しづらいものです。実際にとある精神科の医師からもうかがったことがあるのですが、診断書の「日常生活能力の判定」の7項目を完璧に医師は把握できない場合があるといいます。それは、日常生活は読んで字のごとく日常でおきており、診察室ではおきていないからです。本当の意味で、日常生活能力を把握しているのは、身近な人間(家族・施設職員など)です。ですから、診断書を依頼する時は、改めてですが、日常生活のありのままをうったえる必要があります。口頭で言うのが難しいのなら、紙に書いて渡すことや、家族の協力を受けることが大事ではないでしょうか。過大にうったえる必要はありません。ありのままの日常生活能力を医師に伝えるべきではないでしょうか。

「私は精神障害で2級の年金をもらえますか?」

よくある質問です。しかし、それは筆者のような社会保険労務士に簡単に判断できるものではありません。精神障害の年金の診断書の「日常生活能力の判定」の医師の評価が障害年金の当否を大きく分けるといって部分は否定できませんが、本人の自覚症状と医師の判断に若干のずれが生じることもありえます。診断書を作成依頼する時は、実際の日常生活の状態を、改めてうったいてみることも必要かもしれません。

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